研究開発

「富岳」による新型コロナウイルスの治療薬候補同定

■新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用について
理化学研究所は、文部科学省と連携し、理研が開発主体となって開発・整備を推進しているスーパーコンピュータ「富岳」を、開発・整備の途上であるものの、国難ともいえる新型コロナウイルスの対策に貢献する成果をいち早く創出するために、可能な限り計算資源を関連研究開発に供出しています。 具体的には、理化学研究所からの協力を踏まえて文部科学省が決定する研究開発の医学的、社会的実施課題に対して、「富岳」の計算資源を開発・整備に支障がない範囲で優先して供出するとともに、実施される研究開発に対して技術的サポートを行っています。

【特集】新型コロナウイルスの克服に向けて
・プレスリリース:「新型コロナウイルス対策を目的としたスーパーコンピュータ「富岳」の優先的な試行的利用について」
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「富岳」は科学面での貢献のみならず、人々が安全・安心・快適に生活を営む未来社会「Society 5.0」の実現に役立てるため開発が行われており、新型コロナウイルスへの対応は、「富岳」の利用目的とマッチするものです。私たちは、医学的側面から新型コロナウイルスによる被害の軽減に貢献すべく下記の研究課題に取り組んでいます。
「富岳」による新型コロナウイルスの治療薬候補同定 (課題代表者;理化学研究所/京都大学 奥野 恭史)

実施内容:
現在、既存治療薬の新型コロナウイルスへの効果を確認する臨床試験が国内外で進められてます。これらの試験を通じて、一部、薬効を示したなどの報告もありますが、症例数が少ないなど、未だ効果的な治療薬を特定するに至っていません。また、試験されている薬剤も数種類であり、どの薬剤も明確な効果を示すことが見いだされない可能性もあります。そこで、本研究では、「富岳」を用いた分子動力学計算により、臨床試験で対象にされている既存の抗ウイルス薬に限定せず、約2000種の既存医薬品の中から、新型コロナウイルスの標的タンパク質(プロテアーゼなど)に高い親和性を示す治療薬候補を探索・同定することに取り組んでいます。

期待される成果:
・現在、国内外で実施されている臨床試験の抗ウイルス薬に限定せず、約2000種の既存医薬品の中から候補探索を行うため、新たな治療薬候補の発見が期待されます。
・複数の薬剤のタンパク質への作用を同時に評価できるため、複数の薬剤のコンビネーション効果を推定できる可能性があります。
・分子動力学計算により、薬剤と標的タンパク質の作用が分子レベルで明らかになることから、現在、臨床試験がなされている抗ウイルス薬の作用メカニズムの知見を得ることができます。さらに、これらの知見により、既存医薬品を越える新規な薬剤開発の明確な方針が得られます。


図:約2000種の既存医薬品の中から、新型コロナウイルスの標的タンパク質に高い親和性を示す治療薬候補を探索・同定


【研究成果】
「COVID-19の治療薬候補を既存薬の中から計算で探し出す」 (富岳百景創刊号(2020/10/31)) 
新型コロナウイルスの治療薬候補の探索と同定に貢献 ~「富岳」による新型コロナウイルス対策その2 (2021年1月14日更新) 
2020年7月3日 記者勉強会 (5月15日の勉強会で発表した内容からの進捗)
2020年5月15日 記者勉強会

【参考資料】
理化学研究所計算科学研究センターのページ
課題提案時の資料(PDF 約0.5MB)
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