広報・アウトリーチ活動

創薬ビッグデータ統合システム

2015年2月よりスタートした「富岳」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題、重点課題1「生体分子システムの機能制御による革新的創薬基盤の構築」では、ゲノム医療・創薬に貢献する創薬ビッグデータ統合システムの完成を目指して超大規模生体分子システムシミュレーション、長時間分子シミュレーション技術の開発を行ってきました。それにより分子動力学計算の超高速化が可能になったことで、すでに「京」で実効的な実績があるアプリケーションが「富岳」において演算能力を最大限に活かせるようになり、「富岳」に対してチューンナップされたMD計算ソフトおよび創薬計算手法を用いて、創薬計算フロー(スクリーニングからリード最適化)にそって連結した統合システムを開発しています。 これらの成果については、下図の創薬ビッグデータ統合システムのフローよりクリックしてご覧いただけます。


計算ソフトおよび創薬計算手法

創薬ビッグデータ統合システムのフローよりクリックしてご覧ください。 (創薬ビッグデータ統合システム一覧表(PDFファイル)からもクリックしてご覧いただけます。)

soft_BPBI soft_CafeMol soft_ChemTS
図:創薬ビッグデータ統合システム フロー バーチャルスクリーニング,ドッキング計算 APOマルチコンフォーメーション生成,タンパク質間ネットワーク推定 結合自由エネルギー計算 複合体マルチコンフォーメーション解析 選択性予測,複数タンパク質との結合評価 システム構築,組合せ最適化アルゴリズム 化学構造変換手法 化合物生成手法

創薬ビッグデータ統合システムのフロー


■計算ソフトおよび創薬計算手法 一覧

 GENESIS
 開発責任者  杉田有治(理化学研究所開拓研究本部 杉田理論分子研究室 主任研究員)
 タンパク質、膜、核酸、糖鎖など、生体内分子系のための分子動力学ソフトウェア

 generalized Replica-Exchange with Solute Tempering (gREST)
 開発責任者  杉田有治(理化学研究所開拓研究本部 杉田理論分子研究室 主任研究員)
 生体分子系の一部の温度を向上させることでサンプリング効率を向上させる

 generalized Replica-Exchange with Solute Tempering combined with a flat-bottom restraint
 開発責任者  杉田有治(理化学研究所開拓研究本部 杉田理論分子研究室 主任研究員)
 gREST法によってリガンドのサンプリングを加速し、リガンド結合ポーズを予測する

 generalized Replica-Exchange with Solute Tempering combined with Replica-Exchange Umbrella Sampling (gREST/REUS)
 開発責任者  杉田有治(理化学研究所開拓研究本部 杉田理論分子研究室 主任研究員)
 gREST法とREUS法を組合せることでリガンド-タンパク質結合のサンプリング効率を向上させる

 Gaussian accelerated Replica-Exchange Umbrella Sampling (GaREUS)
 開発責任者  杉田有治(理化学研究所開拓研究本部 杉田理論分子研究室 主任研究員)
 Gaussian accelerated Molecular Dynamics (GaMD)法とREUS法を組合せることで生体分子の構造サンプリングの効率を向上させる

 Free Energy Perturbation (FEP)
 開発責任者  杉田有治(理化学研究所開拓研究本部 杉田理論分子研究室 主任研究員)
 標的タンパク質とリガンドの結合親和性を精密に計算する

 ColDock
 開発責任者  北尾 彰朗 (東京工業大学 生命理工学院 教授)
 タンパク質と低分子の複合体立体構造を全原子モデルで高速に予測する

 dPaCS-MDMSM
 開発責任者  北尾 彰朗 (東京工業大学 生命理工学院 教授)
 タンパク質複合体の解離シミュレーションによってタンパク質複合体の結合エネルギー・解離速度定数・結合速度定数を計算。

 evERdock
 開発責任者  北尾 彰朗 (東京工業大学 生命理工学院 教授)
 タンパク質ータンパク質ドッキングによって生成した大量のデコイから全原子モデルを使った高速計算で結合自由エネルギーを評価することによって尤もらしいものを選択する

 SCUBA
 開発責任者  石田 恒(量子科学技術研究開発機構 上席研究員)
 全原子モデル計算により核酸やタンパク質などの生体高分子を対象にした分子動力学シミュレーションを実行する

 CafeMol
 開発責任者  高田 彰二 (京都大学 大学院理学研究科 教授)
 生体分子の粗視化分子動力学シミュレーション

 QM/MM RWFE-SCF 法
 開発責任者  林 重彦(京都大学大学院理学研究科 教授)
 非経験的量子化学計算と長時間分子動力学シミュレーションを組み合わせた確率的最適化手法により、機能活性部位の電子状態と分子構造を精度よく決定する

 Naive Bayes Classifier
 開発責任者  山下 雄史(東京大学 先端科学技術研究センター 特任准教授)
 ペプチド・タンパク質の構造をナイーブベイズ分類器によって、構造変化を検知する

 DirectionalStatistics
 開発責任者  山下 雄史(東京大学 先端科学技術研究センター 特任准教授)
 ペプチド・タンパク質の2面角群に対して、周期性を考慮した平均・分散を算出する

 WaterHall
 開発責任者  山下 雄史(東京大学 先端科学技術研究センター 特任准教授)
 MDシミュレーションで得られる構造ファイル群に対して、計算位相幾何学的にタンパク質周囲の水分子分布を特徴付ける

 MP-CAFEE (Massively Parallel Computation of Absolute binding Free Energy with well-Equilibrated states)
 開発責任者  藤谷 秀章(東京大学 先端科学技術研究センター 特任教授)
 標的タンパク質と低分子量有機化合物の結合親和性(結合自由エネルギー)を大規模分子動力学シミュレーションによって精密に計算する

 FUJI force field
 開発責任者  藤谷 秀章(東京大学 先端科学技術研究センター 特任教授)
 高精度タンパク質力場

 TSMD(Tree Search Molecular Dynamics Simulation)
 開発責任者  津田 宏治(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授)
 タンパク質のフォールディングの過程を、高速にシミュレーションすることができる

 BPBI(Binding pose prediction by best arm identification)
 開発責任者  津田 宏治(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 教授)
 MM-PBSAを用いた自由エネルギー計算の際、初期ドッキングポーズを機械学習で適切に選択することで、高速化する

 ChemTS
 開発責任者  津田 宏治(東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
 所望の特性を持つ化合物を、深層学習とシミュレーションを組み合わせて設計する

 COMBO(COMmon Bayesian Optimization)
 開発責任者  津田 宏治(東京大学大学院新領域創成科学研究科 教授)
 ベイズ最適化を用いた実験計画

 心毒性予測システム
 開発責任者  寺田 透(東京大学大学院情報学環 准教授)
 薬剤が不整脈を誘発するリスクを予測するために心筋イオンチャネルに対する薬剤の親和性を予測する

 Virtual Ligand (VL) method
 開発責任者  奥野 恭史(京都大学大学院医学研究科 教授)
 仮想リガンドによりタンパク質ポケット空間を膨張させた後、化合物ドッキング・MD/MM-PBSA法により医薬品化合物の結合ポーズを予測する

 Parallel-rDock
 開発責任者  奥野 恭史(京都大学大学院医学研究科 教授)
 スパコンを用いてタンパク質-化合物ドッキング計算を高速に実行する

 FP-rDock
 開発責任者  奥野 恭史(京都大学大学院医学研究科 教授)
 タンパク質柔軟性を考慮したタンパク質-化合物ドッキング計算を実行する



その他のソフトウェア

「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」および「HPCI戦略プログラム 分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」においてスーパーコンピュータ「京」で開発されたソフトウェアをご紹介しています。

HPCI戦略プログラム 分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」で開発されたソフトウェア
HPCI戦略プログラム 分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」にて開発されたソフトウェアの公開サイトをご覧ください。

「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」で開発されたソフトウェア
「次世代生命体統合シミュレーションソフトウェアの研究開発」にて開発されたソフトウェアの公開サイトをご覧ください。



ソフトウェア利用について
1. 利用にあたっての注意点
全てのソフトウェアについて、可能な範囲で、ソースコード、実行用スクリプト、サンプル入力データ、実行結果ファイル、実行手順書、生命科学者向け チュートリアル資料等のコンテンツ提供を目指しています。また、実行環境はスーパーコンピュータ「京」を想定しています。ただし、スーパーコンピュータ 「京」でその性能を発揮できるように開発されている点、ご留意ください。また、実行できる計算機環境や著作権等の問題から全てのコンテンツが用意されていないソフトウェアもあります。

2. 利用許諾権(ライセンス)等について
本HPで提供しているソフトウェアの利用許諾権(ライセンス)は個々のソフトウェアの著作権者が定めており、個々のソフトウェアごとに異なります。個々のソフトウェアごとに、著作権者によって記載されている利用許諾権(ライセンス)にご留意ください。 なお、本HPで提供しているソフトウェアの著作権に関連する事項は、個々のソフトウェアの開発責任者にご確認ください。


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